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大阪地方裁判所 昭和58年(ワ)8578号 判決

主文

一  被告三星ジャパン株式会社は原告に対し、金四〇七万四六〇〇円及びこれに対する昭和五八年一二月一五日から支払いずみまで年六分の割合による金員を支払え。

二  原告の被告三星ジャパン株式会社に対するその余の請求及び被告三星物産株式会社に対する各請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用は、原告と被告三星物産株式会社の間においては、全部原告の負担とし、原告と被告三星ジャパン株式会社の間においては、原告に生じた費用の二分の一を被告三星ジャパン株式会社の負担とし、その余は各自の負担とする。

四  この判決は、原告勝訴の部分に限り、仮に執行することができる。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告三星物産株式会社(以下「被告物産」という。)は原告に対し、金二四五三万八六八二円及びこれに対する昭和五五年七月一日から支払いずみまで年六分の割合による金員を支払え。

2  被告三星ジャパン株式会社(以下「被告ジャパン」という。)は原告に対し、金四〇七万四六〇〇円及びこれに対する昭和五五年三月四日から支払いずみまで年六分の割合による金員を支払え。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

4  仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  本案前の答弁

(一) 本件訴えを却下する。

(二) 訴訟費用は原告の負担とする。

2  本案の答弁

(一) 原告の請求をいずれも棄却する。

(二) 訴訟費用は原告の負担とする。

第二  当事者の主張

一  被告らの本案前の主張

1  被告物産の管轄に関する主張

原告の被告物産に対する本件訴訟については、我が国の裁判所に裁判管轄は存しない。

(一) 被告物産は、大韓民国法によって設立された外国法人である。

(二) 国際裁判管轄について民訴法の裁判籍に関する規定を類推しうると解されるが、同法四条三項、九条の趣旨によれば、我が国に営業所が存在することを理由として国際裁判管轄権が認められるのは、日本の営業所の業務に関する事件のみである。

(三) しかし東京都千代田区霞が関三丁目二番五号を所在地とする被告物産の日本における営業所の登記が存在し、被告物産は、形式上、東京都内の被告ジャパン本社所在地に「三星物産東京支店」を、大阪市内の被告ジャパン大阪支店所在地に「三星物産大阪支店」をそれぞれ置いているが、右両支店においては何等一切の営業活動を行っていないのであるから、原告主張の諸行為は、右各支店の業務に関しないものである。

(四) 又原告が本件において主張する被告物産との間の各取引は、すべて大韓民国ソウル特別市の被告物産の本社で行なわれたものであるから、右両支店の業務に関するものではない。

2  被告ジャパンの二重起訴主張

被告ジャパンは原告を相手どり為替手形金の支払いを求めて大阪地方裁判所に訴えを提起し、右訴訟は上告審に係属中であるところ、原告は、右訴えにおいて本訴請求原因5項で主張する損害賠償請求権を自働債権とする相殺の抗弁を主張している。よって本訴請求は二重起訴として不適法であるから訴え却下を免れない。

二  被告らの本案前の主張に対する原告の主張

1  被告物産に対する国際裁判管轄について

被告物産に対する本件訴えについて、条理上日本の裁判所に管轄権が認められるべきである。

(一) 被告物産は、東京都千代田区霞が関三丁目二番五号に営業所を有し、かつ禹榮泰を日本における代表者と定め、東京法務局に右営業所及び代表者の登記をなし、現に右営業所で営業活動を行っており、また大阪市北区梅田一丁目二番四の一六〇〇号駅前第四ビルにも営業所を有している。

以上のように被告物産は日本において営業所を有しかつ代表者を置いているから、日本において訴訟活動を行うにつき何らの支障もない。又民事訴訟法四条三項は、請求がその営業所の業務と関連することを要件とはしていない。

そして、本件被告物産に対する請求は、被告物産の輸入契約不履行に基づく損害の賠償を求めるものであるから、被告物産の前記東京、大阪の営業所の所在地をもって普通裁判籍とすべきであり、又原告の住所地が義務履行地となる。

(二) 仮に被告主張のように「被告物産が日本に営業所を有しない」としても、以下の事情により被告ジャパンの日本での営業活動は被告物産の営業活動と同視されるべきであり、結局被告物産は被告ジャパンの営業所をもって民事訴訟法第四条三項にいう営業所を有することになる。

即ち、被告ジャパンは被告物産が一〇〇パーセント出資した被告物産の子会社であり、被告ジャパンの代表取締役などの役員も被告物産本社から派遣され、その後再び被告物産に戻っており、一方被告物産は被告ジャパンの本社及び大阪営業所内に事務所を置いているうえ、被告ジャパンは、本件に関連する大阪地方裁判所昭和五五年(ワ)第二二三六号、同三三四二号、同三九〇八号の訴え提起に関する裁可を被告物産に仰ぎ、右訴訟の弁護士費用等を送金してくれるようにとの申し入れをなしていること、これに対する被告物産の意見も、被告ジャパンを被告物産の大阪支店として取り扱っているなどの事情があるのである。

2  被告ジャパンの二重起訴の主張について

(一) 相殺の抗弁として主張された債権を別訴で訴訟物として請求したとしても、民事訴訟法第二三一条の適用はないものというべきである。

(二) 仮に相殺の抗弁として主張した反対債権を別訴で請求することにつき、民事訴訟法第二三一条が類推適用され二重起訴に該当するものとしても、そもそも同条にいう二重起訴というには両訴訟の訴訟物が同一であることを要するところ、原告が本訴で請求しているのは原告が有する損害賠償請求権のうち、被告ジャパンが別訴で請求している請求権を控除した残りの部分であることが明示されており、相殺に用いた部分と本訴請求部分は訴訟物を異にするのであるから、同条を類推適用すべき場合にあたらない。

(三) 結局、原告の被告ジャパンに対する請求は適法である。

三  請求原因

1  訴外野村祐株式会社(以下「破産会社」という)は、昭和六一年一〇月八日大阪地方裁判所において破産宣告を受け、同時に原告が破産管財人に選任された。

2  破産会社は、各種靴下の輸出入、国内仕入れ、国内卸し売りなどの業務を営む株式会社である。

3(一)  破産会社は、昭和五三年一〇月被告物産から、別紙一覧表一記載の靴下を買い入れ、昭和五四年二月から同年一〇月までの間にその引き渡しを受けた。

(二)  ところが、右各靴下には、編糸ほつれ、編目とび、かがり糸ほつれ、かがり目とび、口ゴム糸の弾力不足などの瑕疵がある不良品が含まれていた。

(三)  そのため、破産会社は、次のとおり、右各靴下を値引して売却せざるをえなくなり、合計金三五三万八一九〇円の利益を得ることができず、同額の損害を被った。

(1) 別紙一覧表一のa記載の靴下は、本来一デカあたり金一四五〇円で売却することができる商品であったが、次のとおり、破産会社は、これを値引して売却して損害を被った。

(イ) 昭和五四年五月七日から同年八月六日までの間に一〇回にわたり、訴外サンジャックに対して、一デカあたり金一四〇〇円で合計五六〇デカを売り渡し、合計金二万八〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ロ) 昭和五四年五月二三日から同年七月一一日までの間に九回にわたり、訴外寺文大阪に対して、一デカあたり金一四〇〇円で四〇〇デカ、金一三五〇円で二八〇デカ、金一三〇〇円で一六〇デカ、合計八四〇デカを売り渡し、合計金七万二〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ハ) 昭和五四年五月一五日、旭川の訴外山口繊維株式会社に対して、一デカあたり金一四〇〇円で六〇デカを売り渡し、金三〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ニ) 昭和五四年五月一四日及び同年六月一二日の二回にわたり、札幌の訴外山口繊維株式会社に対して、一デカあたり金一四〇〇円で合計四五デカを売り渡し、合計金二二五〇円のうべかりし利益を失った。

(ホ) 昭和五四年五月二一日から同年八月七日までの間に六回にわたり、訴外株式会社蝶サンに対して、一デカあたり金一三八〇円で六三〇デカ、金一四〇〇円で六〇デカ、合計六九〇デカを売り渡し、合計金四万七一〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ヘ) 昭和五四年五月一二日から同年七月六日までの間に六回にわたり、訴外株式会社裕商に対して、一デカあたり金一四〇〇円で一六〇デカ、金一三八〇円で七七デカ、合計二三七デカを売り渡し、合計金一万三三九〇円のうべかりし利益を失った。

(ト) 昭和五四年五月四日から同年六月一三日までの間に五回にわたり、訴外キープ靴下に対して、一デカあたり金一三五〇円で合計九二〇デカを売り渡し、合計金九万二〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(チ) 昭和五四年六月三〇日、訴外株式会社ヤマキに対して、一デカあたり金一三八〇円で三〇デカを売り渡し、金二一〇〇円のうべかりし利益を失った。

(リ) 昭和五四年六月一五日及び同月三〇日の二回にわたり、訴外ヤングニット株式会社に対して、一デカあたり金一三五〇円で合計二八〇デカを売り渡し、合計金二万八〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ヌ) 訴外オリンピアに対して、昭和五四年七月一三日に一デカあたり金一三二五円で一二〇デカを、同年五月二日に一デカあたり金一四〇〇円で一六〇デカを売り渡し、合計金二万三〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ル) 昭和五四年六月二三日から同年七月七日までの間に三回にわたり、訴外丸進に対して、一デカあたり金一三〇〇円で合計一二〇デカを売り渡し、合計金一万八〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(2) 別紙一覧表のb記載の靴下は、本来一デカあたり金一五〇〇円で売却することができる商品であったが、次のとおり、破産会社は、これを値引して売却して損害を被った。

(イ) 昭和五四年五月一六日から同年八月六日までの間に七回にわたり、訴外サンジャックに対して、一デカあたり金一四〇〇円で合計三〇四デカを売り渡し、合計金三万〇四〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ロ) 昭和五四年六月二五日、訴外三恵ニット株式会社に対して、一デカあたり金一四〇〇円で二八〇デカを売り渡し、金二万八〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ハ) 昭和五四年五月一五日、旭川の訴外山口繊維株式会社に対して、一デカあたり金一四〇〇円で一二〇デカを売り渡し、金一万二〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ニ) 昭和五四年五月一四日及び同年六月一二日の二回にわたり、札幌の訴外山口繊維株式会社に対して、一デカあたり金一四〇〇円で合計九〇デカを売り渡し、合計金九〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ホ) 昭和五四年五月一二日から同年七月五日までの間に六回にわたり、訴外株式会社裕商に対して、一デカあたり金一四〇〇円で一八〇デカ、金一三八〇円で六〇デカ、合計二四〇デカを売り渡し、合計金二万五二〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ヘ) 昭和五四年五月二一日から同年八月九日までの間に八回にわたり、訴外株式会社蝶サンに対して、一デカあたり金一三八〇円で八八〇デカ、金一四〇〇円で六〇デカ、合計九四〇デカを売り渡し、合計金一一万一六〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ト) 昭和五四年八月二一日及び同月二四日の二回にわたり、訴外蝶商に対して、一デカあたり金一三八〇円で合計二八〇デカを売り渡し、合計金三万三六〇〇円のうべかりし利益を失った。

(チ) 昭和五四年六月三〇日、訴外株式会社ヤマキに対して、一デカあたり金一三八〇円で七〇デカを売り渡し、金八四〇〇円のうべかりし利益を失った。

(リ) 昭和五四年六月六日から同年七月一九日までの間に三回にわたり、訴外寿編物株式会社に対して、一デカあたり金一三八〇円で合計七六〇デカを売り渡し、合計九万一二〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ヌ) 昭和五四年六月二六日、訴外丸優産業に対して、一デカあたり金一三五〇円で三九七デカを売り渡し、金五万九五五〇円のうべかりし利益を失った。

(ル) 昭和五四年六月一五日及び同月三〇日の二回にわたり、訴外ヤングニット株式会社に対して、一デカあたり金一三五〇円で合計四四〇デカを売り渡し、合計金六万六〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(オ) 昭和五四年六月五日から同年七月一三日までの間に三回にわたり、訴外オリンピア株式会社に対して、一デカあたり金一三二五円で合計三一三〇デカを売り渡し、合計金五四万七七五〇円のうべかりし利益を失った。

(ワ) 昭和五四年七月一三日、訴外株式会社丸進に対して、一デカあたり金一三〇〇円で二〇デカを売り渡し、金四〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(カ) 昭和五四年六月二九日、訴外オオイシに対して、一デカあたり金一二五〇円で二〇デカを売り渡し、金五〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(3) 別紙一覧表一のc記載の靴下は、本来一デカあたり金一四〇〇円で売却することができる商品であったが、次のとおり、破産会社は、これを値引して売却し損害を被った。

(イ) 昭和五四年一二月一日から昭和五五年一月一七日までの間に三回にわたり、訴外寺文東京に対して、一デカあたり金一三五〇円で合計一七〇デカを売り渡し、合計金八五〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ロ) 昭和五四年一〇月二五日、訴外篠田繊維株式会社に対して、一デカあたり金一三五〇円で一〇二〇デカを売り渡し、金五万一〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ハ) 昭和五四年一〇月二一日、訴外北海繊維株式会社に対して、一デカあたり金一三五〇円で二四〇デカを売り渡し、金一万二〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ニ) 昭和五四年一〇月三日及び同月二二日の二回にわたり、訴外丸装に対して、一デカあたり金一三五〇円で合計六〇デカを売り渡し、合計金三〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ホ) 昭和五四年一一月一三日、訴外八木商会に対して、一デカあたり金一三五〇円で三〇デカを売り渡し、金一五〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ヘ) 昭和五四年一一月一五日、訴外小森宮に対して、一デカあたり金一三五〇円で六〇デカを売り渡し、金三〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ト) 昭和六〇年八月二一日、訴外株式会社丸三に対して、一デカあたり金一三五〇円で三〇〇デカを売り渡し、金一万五〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(チ) 昭和五四年一一月一日、訴外八代靴下に対して、一デカあたり金一三五〇円で一五〇デカを売り渡し、金七五〇〇円のうべかりし利益を失った。

(リ) 昭和五四年一〇月二九日及び同年一一月一二日の二回にわたり、訴外万久商店に対して、一デカあたり金一三五〇円で合計六〇デカを売り渡し、合計金三〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ヌ) 昭和五四年一一月三〇日及び同年一二月二二日の二回にわたり、訴外藤本商店に対して、一デカあたり金一三五〇円で合計九〇デカを売り渡し、合計金四五〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ル) 昭和五四年一〇月四日から同年一二月八日までの間に五回にわたり、訴外川島商店に対して、一デカあたり金一三三〇円で四五〇デカ、金一三五〇円で一二〇デカ、合計五七〇デカを売り渡し、合計金三万七五〇〇円のうべかりし利益を失った。

(オ) 昭和五四年一一月五日、訴外株式会社大祐に対して、一デカあたり金一三七〇円で一五〇デカを売り渡し、金四五〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ワ) 昭和五四年九月二一日、訴外丸幸商事に対して、一デカあたり金一三〇〇円で三〇デカを売り渡し、金三〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(カ) 昭和五四年九月七日から同年一〇月二一日までの間に、三回にわたり、訴外風間に対して、一デカあたり金一三〇〇円で合計三一〇デカを売り渡し、合計金三万一〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ヨ) 昭和五四年一二月一九日、訴外株式会社裕商に対して、一デカあたり金一三〇〇円で一二〇デカを売り渡し、金一万二〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(タ) 昭和五四年一〇月一七日及び同年一一月五日の二回にわたり、訴外サンリン株式会社に対して、一デカあたり金一二五〇円で合計六〇〇デカを売り渡し、合計金九万円のうべかりし利益を失った。

(レ) 昭和五四年一〇月一二日及び翌年二月五日の二回にわたり、訴外鈴木忠株式会社に対して、一デカあたり金一二五〇円で合計三三〇デカを売り渡し、合計金四万九五〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ソ) 昭和五四年一〇月二日及び同年一一月一九日の二回にわたり、訴外上田商事株式会社に対して、一デカあたり金一二五〇円で合計三三〇デカを売り渡し、合計金四万九五〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ツ) 昭和五四年一一月二〇日から同年一二月三日までの間に四回にわたり、訴外稲坂莫大小製造に対して、一デカあたり金一二二五円で合計二四一〇デカを売り渡し、合計四二万一七五〇円のうべかりし利益を失った。

(ネ) 昭和五四年一一月九日、旭川の訴外山口繊維株式会社に対して、一デカあたり金一一五〇円で三〇〇デカを売り渡し、金七万五〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ナ) 訴外有限会社丸中商店に対して、昭和五四年九月二一日に一デカあたり金一〇〇〇円で一二〇デカ、同年一二月一七日に一デカ当り金一三五〇円で六〇デカを売り渡し、合計五万一〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ラ) 昭和五四年一〇月一八日、訴外トーヨーに対して一デカあたり金一三〇〇円で三〇デカを売り渡し、金三〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(4) 別紙一覧表一のd記載の靴下は、本来一デカあたり金一三五〇円で売却することができる商品であったが、次のとおり、破産会社は、これを値引して売却し損害を被った。

(イ) 昭和五四年一〇月一八日、訴外トーヨーに対して、一デカあたり金一二五〇円で六〇デカを売り渡し、金六〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ロ) 昭和五四年一〇月三日及び同年一〇月二一日の二回にわたり、訴外篠田繊維株式会社に対して、一デカあたり金一二五〇円で合計二三四〇デカを売り渡し、合計金二三万四〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ハ) 昭和五四年一〇月四日から同年一一月二四日までの間に五回にわたり、訴外川島商店に対して、一デカあたり金一三三〇円で合計二四〇デカを売り渡し、合計金四八〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ニ) 訴外山形屋商事に対して、昭和五四年一一月一六日に一デカあたり金一二五〇円で二〇デカ、同月一六日に一デカあたり金一一五〇円で二〇デカを売り渡し、合計金六〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ホ) 昭和五四年七月六日から同年一一月五日までの間に三回にわたり、訴外丸安商会に対して、一デカあたり金一二五〇円で六〇〇デカ、金一一〇〇円で五〇デカ合計六五〇デカを売り渡し、合計金七万二五〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ヘ) 昭和五四年一一月九日、旭川の訴外山口繊維株式会社に対して、一デカあたり金一二五〇円で三〇〇デカを売り渡し、金三万円のうべかりし利益を失った。

(ト) 昭和五四年八月七日及び同月三〇日の二回にわたり、訴外和合に対して、一デカあたり金一一五〇円で合計一〇二〇デカを売り渡し、合計金二〇万四〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(チ) 昭和五四年一一月一九日、訴外稲坂莫大小製造に対して、一デカあたり金一二二五円で一五〇〇デカを売り渡し、金一八万七五〇〇円のうべかりし利益を失った。

(リ) 昭和五四年一〇月二一日、訴外鈴木忠株式会社に対して、一デカあたり金一二五〇円で三〇〇デカを売り渡し、金三万円のうべかりし利益を失った。

(5) 別紙一覧表一のe記載の靴下は、本来一デカあたり金一三五〇円で売却することができる商品であったが、次のとおり、破産会社は、これを値引して売却し損害を被った。

(イ) 昭和五四年一〇月四日、訴外川島商店に対して、一デカあたり金一三三〇円で三〇デカを売り渡し、金六〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ロ) 昭和五四年一〇月一八日、訴外トーヨーに対して、一デカあたり金一三〇〇円で三〇デカを売り渡し、金一五〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ハ) 昭和五四年一〇月一七日及び同年一一月五日の二回にわたり、訴外サンリン株式会社に対して、一デカあたり金一二五〇円で合計三〇〇デカを売り渡し、合計金三万円のうべかりし利益を失った。

(ニ) 昭和五四年一〇月二日及び同年一一月一九日の二回にわたり、訴外上田商事株式会社に対して、一デカあたり金一二五〇円で合計二一〇デカを売り渡し、合計金二万一〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ホ) 昭和五四年一一月三〇日、訴外稲坂莫大小製造に対して一デカあたり金一二二五円で四二〇デカを売り渡し、金五万二五〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ヘ) 昭和五四年九月二一日、訴外有限会社丸中商店に対して一デカあたり金一〇〇〇円で一二〇デカを売り渡し、金四万二〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(6) 別紙一覧表一のf記載の靴下は、本来一デカあたり金一三〇〇円で売却することができる商品であったが、次のとおり、破産会社は、これを値引して売却し損害を被った。

(イ) 訴外サンデー鈴木に対して、昭和五四年五月一八日に一デカあたり金一二五〇円で四〇デカ、同月二三日に一デカあたり金一二八〇円で二〇〇デカを売り渡し、合計金六〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ロ) 昭和五四年九月一日、訴外株式会社裕商に対して、一デカあたり金一二七〇円で一〇〇デカを売り渡し、金三〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ハ) 昭和五四年九月四日、訴外株式会社マリモに対して、一デカあたり金一二五〇円で三二〇デカを売り渡し、金一万六〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ニ) 昭和五四年九月三日、訴外イイダ靴下に対して、一デカあたり金一二五〇円で六〇〇デカを売り渡し、金三万円のうべかりし利益を失った。

(ホ) 昭和五四年九月一日及び同月一二日の二回にわたり、訴外株式会社川村繊維に対して、一デカあたり金一二五〇円で合計一〇〇デカを売り渡し、合計金五〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ヘ) 昭和五四年六月二二日、訴外三恵ニットに対して、一デカあたり金一二〇〇円で一二〇デカを売り渡し、金一万二〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ト) 訴外株式会社ヤマニシに対して、昭和五四年六月一六日に一デカあたり金一二〇〇円で一二〇デカ、同年一〇月二三日に一デカあたり金一〇五〇円で一〇〇デカを売り渡し、合計三万七〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(チ) 昭和五四年九月二九日、訴外株式会社蝶サンに対して、一デカあたり金一一五〇円で一二〇デカを売り渡し、金一万八〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(リ) 昭和五四年一一月一六日、訴外山形商事に対して、一デカあたり金一二五〇円で五〇デカ、金一一五〇円で二〇デカ合計七〇デカを売り渡し、合計金五五〇〇円のうべかりし利益を失った。

(ヌ) 昭和五五年二月一六日、訴外オリンピアに対して、一デカあたり金一一五〇円で一〇〇〇デカを売り渡し、金一五万円のうべかりし利益を失った。

(ル) 昭和五四年八月二一日、訴外ワコーに対して、一デカあたり金一一五〇円で八〇デカを売り渡し、金一万二〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

(オ) 昭和五四年一〇月二〇日、訴外大福衣料に対して、一デカあたり金一一〇〇円で一二〇デカを売り渡し、金二万四〇〇〇円のうべかりし利益を失った。

4(一)  破産会社は昭和五五年二月二七日被告物産から、〈1〉テトロン、スパイラル一八〇本針編紳士靴下(以下「〈1〉の靴下」という)九一六〇デカを一デカあたり四・一米ドルで、〈2〉アングラ、ラム混紡糸一七六本ジャガード柄編靴下(以下「〈2〉の靴下」という)四五〇〇デカを一デカあたり五・二米ドルで、〈3〉アクリル、綿混紡糸スポーツ用一デカあたり四九〇グラム靴下(以下「〈3〉の靴下」という)二一六〇デカを一デカあたり四・一米ドルで、〈4〉アクリル、綿混紡糸スポーツ用一デカあたり四三〇グラム靴下(以下「〈4〉の靴下」という)一万四〇〇〇デカを一デカあたり四・一米ドルで(代金総額一二万七二一二米ドル)、右代金の商業信用状が昭和五五年三月一五日までに被告物産に到着すること、右信用状到着後〈1〉及び〈2〉の靴下を同年五月末と同年六月末にわけて、〈3〉の靴下を同年四月に、〈4〉の靴下を同月に四〇〇〇デカ、同年五月及び六月に各五〇〇〇デカを船積みする旨の約定の下で買い入れた。

(二)  破産会社と被告物産は、右契約に際し、破産会社が被告に対して有する前記第3項の損害賠償請求権のうち、一万一九二八米ドル(一デカあたり四〇セントの割合)と代金額を、次の場合に対当額で相殺することとした。

すなわち、破産会社が被告物産に対し右(一)の契約につき代金総額一二万七二一二米ドルから右一万一九二八米ドルを差し引いた商業信用状を開設して被告物産にそれが到着すれば、被告物産が前記各約定日に船積みをし、最終的に契約上の債務が履行された場合は、右控除額である一万一九二八米ドルについて、代金と相殺するというものである。

(三)  破産会社は、訴外兼松江商株式会社(以下「訴外兼松」という)に委託して訴外株式会社北陸銀行に商業信用状開設の手続きをし、同訴外銀行が金額一一万五二八四米ドルの商業信用状を発行し、被告物産は、約定日である昭和五五年三月一五日までに右信用状を受領したにもかかわらず、前記靴下を船積みをしなかった。

四(1)  被告物産の右債務不履行により、破産会社は次のとおり金二一〇〇万〇四九二円の損害を被った。即ち、破産会社は、被告物産が債務の本旨に従った履行をせず、このため前記各靴下が到着しないため、やむなく国内業者から、右各靴下と同等の商品を仕入れて、昭和五五年六月から一一月の間に、一デカあたり、〈1〉の靴下相当の商品を、金二一〇〇円、〈2〉の靴下相当の商品を、平均金二八〇〇円、〈3〉〈4〉の靴下相当の商品を、金一九〇〇円で販売した。従って、〈1〉ないし〈4〉の靴下も右と同じ価額で売り渡すことができたはずである。ところで、本件の契約における約定各船積日の東京市場の対顧客電信相場の一米ドルの最安値は、金二三八円三五銭であり、又、破産会社は、輸入関税、運賃、保険、通関手続代行手数料として輸入契約金額の二七パーセント、国内での販売経費として右金額の一〇パーセントを支出するのが通例である。

右に基づいて、破産会社の逸失利益を計算すると以下のとおり、合計金二一〇〇万〇四九二円となる。

(a) 〈1〉の靴下 金六九七万二五〇〇円

2,100-(4.1×238.35)×(1+0.27+0.1)=761.19

761.19×9,160=6,972,500

(b) 〈2〉の靴下 金四九五万九〇〇〇円

2,800-(5.2×238.35)×(1+0.27+0.1)=1,102

1,102×4,500=4,959,000

(c) 〈3〉の靴下 金一二一万二一九二円

1,900-(4.1×238.35)×(1+0.27+0.1)=561.2

561.2×2,160=1,212,192

(d) 〈4〉の靴下 金七八五万六八〇〇円

1,900-(4.1×238.35)×(1+0.27+0.1)=561.2

561.2×14,000=7,856,800

(2)  仮に、破産会社が、国内業者から仕入れた価額と販売価額との差額が、逸失利益から差引かれるとしても、破産会社は、国内業者からの仕入れのため余分に経費を支出しているので、次のとおり、合計金二一五四万〇四九二円の損害を被ったことになるが、その内金として、金二一〇〇万〇四九二円の損害賠償を求める。

すなわち、破産会社は、得意先納入用に前記靴下の代替同一品を国内業者から仕入れなければならず、次に記載のとおり被告物産からの仕入れ費用(前記被告物産からの購入価格と、その価格に、通常破産会社が輸入関税、運賃、保険、通関手続き代行手数料及び国内販売経費として支出する購入価格の三七パーセントを加えたもの)と国内業者からの代替同一品の仕入れ費用(国内業者からの仕入れ価格に、破産会社が仕入れのために余分に支出した後記経費を加えたもの)との差額分の損失を被った。

(a) 〈1〉の靴下について

イ 国内仕入れ価格 一デカあたり金一八〇〇円

ロ 国内仕入れ経費 一デカあたり金二一〇円

ハ 国内仕入れ費用(イ+ロ) 一デカあたり金二〇一〇円

ニ 被告物産からの購入価格 一デカあたり四・一米ドル

ホ 前記最安値の為替レート 一米ドル金二三八・三五円

へ 被告物産からの仕入れ費用(ニ×ホ×一・三七) 一デカあたり金一三三八・八一円

ト 一デカあたりの仕入れ費用の差額(ハ-へ) 金六七一・一九円

チ 〈1〉靴下全体の仕入れ費用の差額(ト×九一六〇デカ) 金六一四万八一〇〇円

(b) 〈2〉の靴下について

イ 国内仕入れ価格 一デカあたり金二五〇〇円

ロ 国内仕入れ経費 一デカあたり金二八〇円

ハ 国内仕入れ費用(イ+ロ) 一デカあたり金二七八〇円

ニ 被告物産からの購入価格 一デカあたり五・二米ドル

ホ 前記最安値の為替レート 一米ドル金二三八・三五円

へ 被告物産からの仕入れ費用(ニ×ホ×一・三七) 一デカあたり金一六九八・〇一円

ト 一デカあたりの仕入れ費用の差額(ハ-へ) 金一〇八二円

チ 〈2〉靴下全体の仕入れ費用の差額(ト×四五〇〇デカ) 金四八六万九〇〇〇円

(c) 〈3〉の靴下について

イ 国内仕入れ価格 一デカあたり金一八〇〇円

ロ 国内仕入れ経費 一デカあたり金一九〇円

ハ 国内仕入れ費用(イ+ロ) 一デカあたり金一九九〇円

ニ 被告物産からの購入価格 一デカあたり四・一米ドル

ホ 前記最安値の為替レート 一米ドル二三八・三五円

へ 被告物産からの仕入れ費用(ニ×ホ×一・三七) 一デカあたり金一三三八・八円

ト 一デカあたりの仕入れ費用の差額(ハ-へ) 金六五一・二円

チ 〈3〉靴下全体の仕入れ費用の差額(ト×二一六〇デカ) 金一四〇万六五九二円

(d) 〈4〉靴下について

イ 国内仕入れ価格 一デカあたり金一八〇〇円

ロ 国内仕入れ経費 一デカあたり金一九〇円

ハ 国内仕入れ費用(イ+ロ) 一デカあたり金一九九〇円

ニ 被告物産からの購入価格 一デカあたり四・一米ドル

ホ 前記最安値の為替レート 一米ドル二三八・三五円

へ 被告物産からの仕入れ費用(ニ×ホ×一・三七) 一デカあたり金一三三八・八円

ト 一デカあたりの仕入れ費用の差額(ハ-へ) 金六五一・二円

チ 〈4〉靴下全体の仕入れ費用の差額(ト×一万四〇〇〇デカ) 金九一一万六八〇〇円

5(一) 破産会社は、昭和五四年九月二七日被告ジャパンから、別紙一覧表二記載の韓国製パンティストッキング一一万一〇〇〇デカを代金一デカあたり金五〇〇円、合計金五五五〇万円で買い入れてその引き渡しを受けた。

(二) ところが、右パンティストッキングには、つま先に穴あきがある、クリンプタイプの糸、シャータイプの糸、プレーンタイプの糸、ケンネルタイプの糸、マルチタイプの糸を用いたものが混入し、かつ、糸の太さが一五デニール、一八デニール、二〇デニール、三〇デニール、四〇デニールのものが混入し、その上、編織むら、染色むら、ピンホール(小さい穴あき)、ゴム紐切れがある、股下、股上が標準規格より短いもの、太股部が細いもの、ウエスト部のゴム紐が標準規格寸法より短いものがある、インカートン各個につき、別紙一覧表二記載の色組み合わせになっていないものがあるなどの瑕疵があった。

(三)(1) そのため、破産会社は、次のとおり、右パンテイストッキングを他に売却したが、買受人の要求により値引に応じぜざるをえなくなり、合計金一九三二万八四〇〇円の損害を被った。

(イ) 昭和五四年一〇月五日及び同年一一月一五日にサンデーこと訴外鈴木正行に対し、合計二万三四〇〇デカを一デカあたり金六一〇円合計金一四二七万四〇〇〇円で売り渡し、アウトカートンに梱包したままで引き渡した。

ところが、昭和五五年一月初旬ころ同訴外人から前記の瑕疵があるとして値引きまたは返品の要求があり、破産会社は、やむなく一デカあたり金四一〇円合計金九五九万四〇〇〇円の値引きを承諾し、同額の損害を被った。

(ロ) 昭和五四年九月二〇日から同年一二月七日までの間、訴外株式会社美徳商事に対し、合計一万六六二〇デカを一デカあたり金六二〇円合計金一〇三〇万四四〇〇円で売り渡し、アウトカートン詰めのままで引き渡した。

ところが、昭和五五年一月一一月ころ同訴外会社から、前記の瑕疵があるとして(イ)と同様の要求があり、破産会社は、一デカあたり金四二〇円合計金六九八万〇四〇〇円の値引きを承諾し、同額の損害を被った。

(ハ) 昭和五四年一二月一二日及び同月一五日に訴外篠田繊維株式会社に対し、合計四八〇〇デカを一デカあたり金六一〇円合計金二九二万八〇〇〇円で売り渡し、アウトカートン詰めのままで引き渡した。

ところが、昭和五五年一月一〇日、同訴外会社から、前記の瑕疵があるとして(イ)と同様の要求があり、破産会社は、一デカあたり金四二〇円合計金二〇一万六〇〇〇円の値引きを承諾し、同額の損害を被った。

(ニ) 昭和五四年一二月二八日訴外山口繊維株式会社に対し、一八〇〇デカを一デカあたり金六一〇円合計金一〇九万八〇〇〇円で売り渡し、アウトカートン詰めのままで引き渡した。

ところが、昭和五五年一月初めころ同訴外会社から、前記の瑕疵があるとして(イ)と同様の要求があり、破産会社は、一デカあたり金四一〇円合計金七三万八〇〇〇円の値引きを承諾し、同額の損害を被った。

(2) 破産会社は、残余の右パンティストッキングにつき、被告ジャパンに右実情を知らせて善処方を求めたのであるが、被告ジャパンは言を左右にし、右申し入れに応じる態度を示さないため、右商品の処置に窮し、本来は一デカあたり金六一〇円で売却することができた右商品を、次のとおり、やむなく一デカあたり金二〇〇円(仕入れ価格金五〇〇円から金三〇〇円の値引き)で売却せざるをえなくなり、合計金二六三二万一二〇〇円の損害を被った。

(イ) 昭和五五年一月二四日及び同月二九日に訴外山口繊維株式会社に対し、合計五五八〇デカを規格外品であることを明示して、値引きなしの条件で一デカあたり金二〇〇円合計金一一一万六〇〇〇円で売り渡した。

この結果、破産会社は、仕入れ価格との差額一デカあたり金三〇〇円合計金一六七万四〇〇〇円及び少なくとも一デカあたり金六一〇円で転売することにより得られたであろう利益一デカあたり金一一〇円合計金六一万三八〇〇円、総計金二二八万七八〇〇円の損害を被った。

(ロ) 昭和五五年一月三〇日訴外オリンピア株式会社に対し、一万二七二〇デカを一デカあたり金二〇〇円合計金二五四万四〇〇〇円で売り渡した。

この結果、破産会社は、値引き損一デカあたり金三〇〇円合計金三八一万六〇〇〇円及び得べかりし利益として一デカあたり金一一〇円合計金一三九万九二〇〇円、総計金五二一万五二〇〇円の損害を被った。

(ハ) 昭和五五年一月三〇日、訴外ツヅキ株式会社に対し、六〇〇〇デカを一デカあたり金二〇〇円合計金一二〇万円で売り渡した。

この結果、破産会社は、値引き損一デカあたり金三〇〇円合計一八〇万円及び得べかりし利益として一デカあたり金一一〇円合計金六六万円、総計二四六万円の損害を被った。

(ニ) 昭和五五年二月八日及び同月二三日に訴外コンドル株式会社に対し、合計二万七〇〇デカを一デカあたり金二〇〇円、合計金四一四万円で売り渡した。

この結果、破産会社は、値引き損一デカあたり金三〇〇円合計金六二一万円及び得べかりし利益として一デカあたり金一一〇円合計金二二七万七〇〇〇円、総計金八四八万七〇〇〇円の損害を被った。

(ホ) 昭和五五年一月二三日訴外株式会社大祐に対し、一五〇〇デカを一デカあたり金二〇〇円合計金三〇万円で売り渡した。

この結果、破産会社は値引き損一デカあたり金三〇〇円合計金四五万円及び得べかりし利益として一デカあたり金一一〇円合計一六万円五〇〇〇円、総計金六一万五〇〇〇円の損害を被った。

(ヘ) 昭和五五年二月二八日、訴外クラウンソックス株式会社に対し、一万七七〇〇デカを一デカあたり金二〇〇円合計金三五四万で売り渡した。

この結果、破産会社は値引き損一デカあたり金三〇〇円合計金五三一万円及び得べかりし利益として一デカあたり金一一〇円合計金一九四万七〇〇〇円、総計金七二五万七〇〇〇円の損害を被った。

(ト) 昭和五五年三月四日、訴外株式会社サンフォードに対し、一二〇〇デカを一デカあたり金二〇〇円合計金二万四〇〇〇円で売り渡した。

この結果、破産会社は、値引き損一デカあたり金三〇〇円合計金三万六〇〇〇円及び得べかりし利益として一デカあたり金一一〇円合計金一万三二〇〇円、総計金四万九二〇〇円の損害を受けた。

5 よって原告は被告物産に対し、売買契約の不完全履行による損害賠償請求権(請求原因3項)にもとづき金三五三万八一九〇円及びこれに対する昭和五五年七月一日から支払いずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の、同じく被告物産に対し、売買契約の履行遅滞による損害賠償請求権(請求原因4項)にもとづき、金二一〇〇万〇四九二円及びこれに対する昭和五五年七月一日から支払いずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の、被告ジャパンに対し、瑕疵担保責任による損害賠償請求権金四五六九万九六〇〇円のうち相殺により内入れ弁済を受けた残額であるところの金四〇七万四六〇〇円及びこれに対する昭和五五年三月四日から支払いずみまで商事法定利率年六分の割合による遅延損害金の支払いを求める。

四  請求原因に対する認否

1  請求原因3項(一)の事実は認める。同項(二)及び(三)の各事実はいずれも否認する。

2  同4項(一)の事実は認める。同項(二)の事実は否認する。同項(三)の事実は認める。同項(四)の事実は否認する。

被告物産が、右契約の靴下を船積みしなかった理由は、破産会社が開設した商業信用状の金額が一一万五二八四米ドルにすぎず、契約金額である一二万七二一二米ドルに足りなかったからである。そこで、被告物産の担当者呉正治が右信用状のアメンド(訂正)を催告したにもかかわらず破産会社側がこれに応じず、結局右信用状が失効したからであり、被告物産になんら債務不履行はない。

3  同5項(一)の事実は認める。同項(二)、(三)の事実は否認する。

五  被告ジャパンの抗弁

被告ジャパンも株式会社であり、本件は商人間の取引であるから、破産会社には、商品の引き渡しを受けたときには、遅滞なく目的物の検査を行い、万一瑕疵があったときには、これを売り主に通知すべき義務がある。しかるに、破産会社は、昭和五四年九月二七日に被告ジャパンから目的物の引き渡しを受けその後相当期間が経過したにもかかわらず右通知を怠った。したがって破産会社は、被告ジャパンに対して損害賠償請求権を有しない。

六  抗弁に対する原告の認否及び主張

1  抗弁は否認する。

2  本件パンティストッキングは、倉庫業者に寄託されており、荷渡指図書によって破産会社に引き渡されたものであり、破産会社は、転売先から前記のように瑕疵ある旨の通知を受けてこれを確認し、被告に対し、昭和五四年一二月末ころないし昭和五五年一月ころに瑕疵の通知をしたものであるから、商法五二六条に反しない。すなわち、本件パンティストッキングの検査は、アウトカートンを開きインカートンを取り出してこれを開き、ついでセロハン袋詰を取り出し、さらにその袋を開いて畳んだ状態のものを延展しなければならず、瑕疵のないものについては現状に復するためにしわのよらないように折り畳みセロハン袋に体裁よく入れなければならず、原告が荷渡指図書による引き渡しを受けた時点で物理的に本件パンティストッキングの検査が可能であったとしても、経済的、実質的には不可能で、一般消費者が購入したのち、着用の際に初めて瑕疵が発見できるのであって、転売先から通知を受けてそれを確認後直ちに行われた右破産会社から被告ジャパンヘの通知は商法五二六条に反しない。

七  再抗弁

被告ジャパンは、破産会社と請求原因5項(一)の売買契約を締結した昭和五四年九月二七日当時、本件パンティストッキングに瑕疵があることを知っていた。

すなわち、被告ジャパンは、昭和五四年二月一七日訴外シンユー商事株式会社に対し、商品番号八〇五八の本件パンティストッキングと全く同じ物四万デカを売り渡す旨の契約を締結して二万九二二〇デカを引き渡した。そして、訴外シンユー商事株式会社は、同年二月二五日から同年三月三一日までの間に訴外ジャスコ株式会社に対し同商品を売り渡したが、訴外ジャスコ株式会社から、顧客から商品に瑕疵があると苦情を持ち込まれたとしてその返品を受けたので、その旨被告ジャパンに通知して同年四月二七日一万〇三四七デカを返品した。したがって、被告ジャパンは、遅くとも昭和五四年四月二七日には本件パンティストッキングに瑕疵があることを知っていたといえる。

八  再抗弁に対する認否

否認する。

第三  証拠(省略)

理由

第一  被告物産に対する本件各請求の国際裁判管轄について

一  原告の被告物産に対する本訴各請求は、破産会社が大韓民国法人である被告物産から買い受けた靴下に瑕疵があったことによって破産会社が被った損害及び破産会社と被告物産間の靴下の輸入契約に基づく債務を被告物産が期限までに履行しなかったことによって破産会社が被った損害の賠償を求めるものである。

二  ところで、被告物産か大韓民国法に基づいて設立され、同国内に本店を有する外国法人であることは、本件記録により明らかであるから、被告物産に対する本件訴訟は渉外的要素を含む民事訴訟であるが、このような渉外民事訴訟手続の国際裁判管轄について、いまだ確立された国際法上の原則はなく、わが国にも成文法上の規定はない。このような状況のもとにおいては、被告物産に対する本件各種請求についてわが国の裁判所に管轄権が有るか否かは、当事者間の公平、裁判の適正、迅速を期するという民事訴訟の普遍的基本理念により、条理に従って決するのが相当である。そして、わが民事訴訟法の規定する土地管轄は、内国における当事者の公平、裁判の適正、迅速に配慮して設けられているものであるから、そのいずれかが日本国内にあるときは、わが国の裁判所で審理した場合に右民事訴訟の基本理念に著しく反する結果をもたらすような特段の事情がない限り、わが国の裁判所に管轄権を認めるのが、右条理に適うものというべきである。

三  ところで、被告物産は、外国法人ではあるが、禹榮泰を日本における代表者とし、東京都千代田区霞が関三丁目二番五号に営業所が存する旨の東京法務局の登記が存在することが記録上明らかであり、そうである以上、他に特段の事情の認められない限り、被告物産は右登記場所において営業所を有するものと推認するのが相当である。

本件においては、右推認を翻すに足りる特段の事情は存しないのみならず、かえって、成立に争いのない乙第二八号証によれば、昭和五四年二月七日に破産会社と被告物産は、イランコミッションの件について被告物産東京支店長の曹と原告代表者野村裕治が交渉のうえ決定する旨の合意をした事実が認められ、これにより当時被告物産の東京支店が実際に営業活動をしていたことが推認でき、また証人南相斌の証言によれば、日本の破産会社以外の商社は東京あるいは大阪所在の被告物産の支店と取引をしていた事実が認められるのであり、結局少なくとも過去において被告物産は東京、大阪の両支店において実際に営業活動をしていたと認められる。

以上の事実から被告物産は、本件訴訟提起時に東京に現実に営業活動をしている営業所を有していたものと推認するのが相当である。

四  そこで、本件につきわが国の裁判所に管轄権を認められない特段の事情の有無を検討する。

被告物産は、破産会社が被告物産に対し本訴において主張する各取引はすべて大韓民国ソウル特別市の被告物産本社で行われたものであって被告物産の日本における支店の業務に関するものではない旨主張するが、そもそも、日本国内において営業所を有する以上、たとえその支店の業務に関するものでなくても本社に連絡をとって代理人を選任することができるし、証拠の収集その他裁判の追行に特に支障があるとは考えられず、わが国の裁判所に管轄権を認めるについて前記民事訴訟の基本理念に著しく反する結果をもたらす特段の事情となりうるものではない。

そして、本件において他にわが国の裁判所に管轄権を認めることが当事者間の公平、裁判の適正、迅速を期するという理念に反する結果となるような特段の事情は認められない。

五  従って条理上、被告物産に対する本件各請求については、わが国の裁判所に管轄権を認めるのが相当である。

第二  被告ジャパンの本案前の主張について

原告が被告ジャパンに対し本件で請求している債権は、原告が被告ジャパンに対し別訴で相殺の抗弁として主張した自働債権部分を控除した部分であることは本件記録上明らかである。

すなわち、成立に争いのない甲第三五号証、第一四九号証によれば、別訴において被告ジャパンは原告に対し、手形金若しくは売買代金及びその遅延損害金として、(一)金二一八七万五〇〇〇円と、内金一三八七万五〇〇〇円に対する昭和五五年三月五日から、内金八〇〇万円に対する同年五月五日から、(二)金一三八七万五〇〇〇円と、これに対する同年四月五日から、(三)金五八七万五〇〇〇円と、これに対する同年五月五日から、各支払い済みまで年六分の割合による遅延損害金の支払いを求めたのに対し、原告は、右のいずれの遅延損害金請求の起算日よりも前に発生している合計金四五六九万九六〇〇円の損害賠償請求権と対当額での相殺を主張したものであり、本訴訟請求部分である金四〇七万四六〇〇円については相殺の抗弁として主張されていないことが認められるのである。したがって、原告の請求は適法であるというべきである。

第三  原告の本訴各請求についての実体上の判断

一  破産会社が昭和六一年一〇月八日大阪地方裁判所において破産宣告を受け、同時に原告が破産管財人に選任されたことは本件記録によって明らかである。

二  被告らは、請求原因2項の事実を明らかに争わないから、これを自白したものと見なす。

三  本件訴のうち、被告物産に対する各請求については、前示のとおり被告物産が大韓民国法に基づいて設立され、同国内に本店を有する外国法人であることから、実体上どの国の法律が適用されるかが問題となるのでこの点につき判断する。

本件の原告と被告物産との間の各契約につき準拠法の指定に関する明示の合意がなされたとの事実を認めるに足る証拠はない。

しかし、本件記録によれば、原告は、本件訴を当裁判所に提起し、被告物産に対する各請求につき、終始日本法の適用を前提とした主張をしており、一方、被告物産も、実体関係についてはこれに応じて、日本法の適用を前提とした答弁及び反論をしており、原告及び被告物産はともに日本法に準拠するとの意思を明らかにしていることが認められ、右事実によれば、原告と被告物産との間には、両者間の本件各契約についての準拠法を日本法と指定する旨の黙示の合意があったものとするのが相当である。

そこで、原告の被告物産に対する各請求については、日本法の適用を前提として判断する。

四1  請求原因3項(一)の事実は当事者間に争いはない。

2  同項(二)の事実(靴下の瑕疵の有無)について判断する。

(一) 成立に争いのない乙第六号証の二、第二六号証、原本の存在及び成立に争いのない甲第三三号証の一、二、乙第四二号証の一、二、第四三号証、第四四号証の一ないし三、乙第四四号証の一により真正に成立したものと認められる乙第二七号証の一ないし六の各一ないし三、弁論の全趣旨により真正に成立したものと認められる甲第六二号証の一ないし一二、第六三号証の一ないし九、第六四、第六五号証の各一、二、第六六号証の一ないし一三、第六七号証の一ないし一一、第六八号証の一ないし七、第六九号証の一、二、第七〇号証の一ないし五、第七一、第七二号証の各一ないし三、第七三号証の一、二、第七四号証の一ないし三、第七五、第七六号証、第七七、第七八号証の各一ないし三、第七九、第八〇号証の各一、二、第八一ないし第八四号証、第八五、第八六号証の各一、二、第八七号証、第八八号証の一ないし七、第八九号証、第九〇号証の一ないし三、第九一ないし第九三号証の各一、二、第九四号証の一ないし六、第九五号証の一、二、第九六号証、第九七、第九八号証の各一ないし三、第九九、第一〇号証の各一、二、第一〇一号証、第一〇二ないし第一〇四号証の各一、二、第一〇五、第一〇六号証、第一〇七号証の一、二、第一〇八号証の一ないし三、第一〇九号証の一、二、第一一〇号証の一ないし七、第一一一号証の一、二、第一一二ないし第一一六号証、第一一七、第一一八号証の各一、二、第一一九号証、第一二〇、第一二一号証の各一ないし三、第一二二、第一二三号証、第一二四号証の一、二、第一二五、第一二六号証、乙第二二号証、証人垣内甫、同南相斌、同呉正治、原告代表者本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(1) 破産会社は、主に靴下の卸を業とする日本商社であるが、昭和五〇年ころより、訴外兼松を輸入代行者として、被告物産から韓国製靴下類の輸入取引を行うようになった。その取引額は、年間三ないし六億円にのぼり、破産会社は、被告物産からその取引額の大きさ故に感謝状の贈呈を受けたこともあった。

(2) 破産会社は被告物産から、昭和五三年一〇月、別紙一覧表一記載の靴下を買い入れる旨の契約をなし、昭和五四年二月から一〇月にかけて輸入した。これら靴下は、同表aの靴下が一四五〇円、同表bの靴下が一五〇〇円、同表cの靴下が一四〇〇円、同表deの靴下が一三五〇円、同表fの靴下が一三〇〇円相当(いずれも一デカ当たり)で売却しうる商品であるが、原告は、その中の一部について、原告主張のとおり(請求原因2(三))の値引した価額で販売した。

(3) 破産会社は、昭和五四年末ころより、被告物産に対し、右商品については瑕疵があるとのクレームを申立てていたところ、破産会社代表者は、訴外兼松の担当者訴外垣内甫(以下「訴外垣内」という)と共に、昭和五五年二月二六日、及び同月二七日、大韓民国ソウル特別市所在の被告物産本社ビルに赴き、被告物産海外事業部長訴外朴替旭、繊維輸出三部丸編二課長訴外南相斌、同課員訴外呉正治と後記パンティストッキングの瑕疵の問題とあわせ、右問題について話し合った。

(4) 破産会社代表者は、この際、携行のトランク一杯の瑕疵ある商品だという靴下やパンティストッキングを被告物産側に提示した。これに対して被告物産側は、提示された商品と被告物産が破産会社に対して売渡した商品との同一性に疑念を抱きつつも、破産会社が取引額の大きい有力な取引先であることから将来の継続的取引関係を考慮し、金五〇〇万円の補償を申出たか、破産会社は、金一三〇〇万円を主張して結局合意には至らなかった。

以上の事実を認められ、右認定に反する甲第三三号証の一、二の供述記載部分は前掲各証拠に照らして措信しえず、他にこれを覆すに足りる証拠はない。

(二) しかし、破産会社が示した靴下と被告物産が売却した靴下との結び付きが明らかでなく、又右認定の事実によれば、被告物産にとって破産会社はその取引額の多さゆえ感謝状の対象になるほどの取引先であって金五〇〇万円に関する申し入れは、継続的な取引関係を考慮してのものであって靴下の瑕疵を認めたうえでのものではなかったものである。

また別紙一覧表一a記載の靴下について、これを売却した価額の最低額は一デカあたり金一三〇〇円であり、瑕疵がないとしての売却価額は、一デカあたり金一四五〇円であって、その差は約一割強にすぎず、別紙一覧表bないしfの靴下についても、その差は概ね二割までであって、商取引殊に商品の価額の決定が、商品の需給関係、当事者の力関係、販売技術の巧拙など様々な需要によって影響を受けることは見易い道理であり、右の程度の値引があったからといって、瑕疵の存在まで推認することは困難である。

そして、他に前記靴下に瑕疵があったとの事実を認めるに足る証拠はない。

3  よって、その余の主張について判断するまでもなく、原告の被告物産に対する靴下の瑕疵を理由とする損害賠償の請求は理由がない。

五1  請求原因4項(一)、(三)の事実はいずれも当事者間に争いがない。そして右売買契約は、商業信用状の開設交付が、靴下の船積みよりも先履行の関係に立つ趣旨の契約と解するのが相当である。

2  そこで、商業信用状の減額の合意の有無について検討する。

破産会社代表者、訴外垣内、被告物産の訴外朴部長、訴外南課長、訴外呉課員らが、昭和五五年二月二六日及び二七日の両日、別紙一覧表一記載の靴下をめぐる紛争等の解決について話し合ったが、結局合意には至らなかったことは前記認定のとおりである。そして、成立に争いのない甲第二七号証、乙第二号証の一(但し書き込み部分を除く)、証人垣内甫、同南相斌、同呉正治の各証言及び弁論の全趣旨によれば、右会談の席上破産会社と被告物産との間で〈1〉ないし〈4〉の靴下の売買契約が締結され、その代金総額が一二万七二一二米ドルと合意されたこと、従って、その席上では、右売買契約の代金に関する信用状は額面一二万七二一二米ドルで開設することが約されていたことが認められ、右認定に反する証拠はない。

もっとも、証人垣内甫の証言、及び甲第六一号証には、昭和五五年二月末に破産会社代表者と訴外垣内が帰国のためソウル空港に向かう車中において、右両名と両名を送るために同乗していた被告物産の訴外南課長との間で、右トラブルの補償の一部の解決をはかるために、本件信用状の金額を減額する旨合意したとの供述及び記載がある。しかし、前掲乙第二六号証、成立に争いのない乙第二八、第二九号証、証人南相斌、同呉正治の各証言によれば、破産会社と被告物産間の従前のクレーム処理については原則的に書面を作成していること、被告物産は破産会社に対し、減額された商業信用状を受領後、直ちにその訂正の申入れを行っていることが認められるのみならず、被告物産の本店における話し合いにおいて、補償額の合意を得られなかったにも拘らず、帰国間際の車中におけるわずかの時間において、取引上重要な合意が成立したというのは極めて奇異であるといわざるをえず、到底垣内の右証言及び甲第六一号証は採用することができない。そして、他に減額の合意を認めるに足る証拠はない。

3  以上によれば、その余の主張につき判断するまでもなく、原告の被告物産に対する履行遅滞を理由とする損害賠償の請求は理由がない。

六1  請求原因5項の(一)の事実は当事者間に争いがない。

2  そこで、同項(二)、(三)の事実について判断する。

前掲甲第三二号証の一、二、原本の存在及び成立に争いのない甲第三三号証の一、二、第三四、第四一、第四二号証、甲第三二号証の一、二により真正に成立したものと認められる甲第五号証の一、二、第六号証の一ないし五、第七号証の一ないし八、第八号証の一ないし三、第九号証の一ないし四、第一〇号証の一、二、第一一号証、第一二号証の一ないし四、第一三号証、第一四号証の一、二、第一五、第一六号証、甲第三四号証により真正に成立したものと認められる甲第一七号証の一によれば、次の各事実が認められる。

(1) 破産会社が被告ジャパンから買入れた右パンティストッキングには、原告主張(請求原因5(二))のとおりの瑕疵のあるものが混在し、全体のほぼ三分の二が商品価値のないものであった。

(2) 破産会社は、被告ジャパンから前記パンティストッキングの引き渡しを受けた後請求原因5(三)(1)記載のとおりサンデーこと訴外鈴木らに売却したが、その直後の昭和五四年末から翌五五年初めにかけて、右売り渡し先から、右商品には前記認定のとおりの瑕疵があるため返品する旨の苦情を相次いで受けた。そのため、破産会社は、売り渡し先から商品を取り寄せるなどして見分したところ、前記認定のとおりの瑕疵のあるものが多数混在していることが確認された。

そこで、破産会社は直ちに被告ジャパンにその旨申し入れをなし、また、昭和五五年二月末ころ右商品の輸出先である被告物産本社にも、右商品の引き取り及び値引き方の交渉をしたが、らちがあかず、やむなく右原告の売り渡し先と交渉して、引き取りの要求は抑えたものの、原告主張(請求原因5(三)(1))のとおりの値引き要求には応諾せざるをえなくなり、また、まだ売却していなかった品物についても、一デカあたり少なくとも金六一〇円で転売しうる筈であったのに、到底まともな商品として売却することができないため、やむなく傷物として請求原因5(三)(2)記載のとおり(但し訴外株式会社サンフォードに対する売却数量は一二〇デカである)訴外山口繊維株式会社外に対し、一デカあたり金二〇〇円で売却した。

以上の事実が認められ、乙第一八号証の一、第二五号証、第三九号証、第四二号証の一、二、第四三号証、第四五号証の一、二記載及び証人呉正治、同南相斌の供述中右認定に反する部分は前掲各証拠に照らして措信できず、他に右認定を覆すに足る証拠がない。

3  次に、右瑕疵に帰因する損害につき判断する。

たしかに、値引きや安売りについては、商品の瑕疵の内容やその程度という事情のほかに商品に対する需給状況、取引交渉の巧拙、取引相手との力関係などの諸条件の影響を受けてその額が決定されるであろうことは既に説示したところであるが、本件パンティストッキングの場合においては、その瑕疵の内容、程度については、前記認定のとおりであり、又前記認定の被告ジャパンとの交渉経過及び前掲甲第四一号証、第四二号証を総合すれば、破産会社の行った値引き、安売りの額が不当に低きにすぎたということはできない。

そうであるから、結局原告の主張する損害額合計金四五六九万九六〇〇円は、すべて本件パンティストッキングの瑕疵に基づく損害というほかはない。

ちなみに、破産会社のうけた右損害のなかには、転売による得べかりし利益も含まれているところ、前掲甲第三二、第三号証の各一、二、乙第四二号証の一、二、原告代表者本人尋問の結果及び弁論の全趣旨によれば、破産会社は靴下類の卸売を目的とする会社であり、前記パンティストッキングも転売目的で買い受けたものであり、右事実は被告ジャパンも知悉していたことが認められ、かかる場合、破産会社の受けた右損害はすべて賠償請求の対象に含まれると解するのが相当である。

4  通知義務違反について

(一) 抗弁事実のうち、被告ジャパンが株式会社であることは、原告において、明らかに争わないから、これを自白したものとみなす。

(二) 前掲甲第三二、第三三号証の各一、乙第四二号証、成立に争いのない乙第六号証の二、乙第四二号証の二により真正に成立したものと認められる乙第一一号証の一、二によれば、昭和五四年九月二七日に破産会社に本件パンティストッキングが引き渡されたことが認められる。

5  本件パンティストッキングが倉庫業者に寄託されており、その引き渡しが荷渡指図書によってなされたことは、前掲甲第三二、第三三号証の各一、乙第一一号証の一、二、第四二号証の二によって認められるところ、商法五二六条にいう「目的物ヲ受取リタルトキ」とは、現実に目的物を受け取って検査しうる状態におくことを必要とするのであって、荷渡指図書の交付を受けたのみでは、いまだ、右「受取」りにはあたらないというべきであり、したがって本件においては、破産会社が瑕疵の存在を認識しえた時点で直ちに通知をすれば足りるものと解すべきであるところ、前掲甲第三二号証の一、二、本件パンティストッキングの包装が別紙一覧表二記載のとおりであること(この事実は当事者間に争いがない)及び弁論の全趣旨によれば、本件パンティストッキングは、二足がいずれも折畳んでセロハン袋に入れてあり、右二足入りのセロハン袋一五〇袋がダンボール製のインカートンに詰めてガムテープで閉じ、さらにインカートン二個をダンボール製のアウトカートンに入れてガムテープで閉じてあったこと、したがって、本件パンティストッキングを検査するには、セロハン袋詰のまま瑕疵を発見することは困難であるから、これらを順次開封したうえ、最終的にはセロハン袋を開いて折畳んだものを延展しなければならないこととなるが、そのように開封すれば、これを原状に復するためには開封の際、セロハン袋が破れずかつ皺がよらないようになどしなければならず、又原状に復する際にはパンティストッキングを皺のないよう折畳みこれをセロハン袋に体裁よく入れなければならないことが認められるから、本件パンティストッキングの検査は物理的に可能であったとしても、経済的、営業的には不可能であって、結局は消費者が購入後着用の際に始めて瑕疵を発見することができるものというべきであるから、破産会社が転売先から瑕疵ある旨の通知を受けた時点で直ちにこれを被告ジャパンに通知すれば足りるものといわなければならない。そして、破産会社が転売先から通知を受けて直ちに被告ジャパンに対し通知をしたことは、さきに認定したところである。

そうであるから、被告ジャパンの通知義務違反の主張は理由がない。

六  結論

よって、原告の被告物産に対する請求はいずれも理由がないからこれを棄却し、遅延損害金を除いた原告の被告ジャパンに対する請求は、理由があるからこれを認容し、遅延損害金については、本件訴状送達の日以前の部分については、理由がないが、本件記録上明らかな訴状送達の翌日である昭和五八年一二月一五日以降の部分については、訴状送達をもって催告があったものとして、その限度でこれを認容し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条を、仮執行の宣言につき同法一九六条一項を、それぞれ適用して、主文のとおり判決する。

別紙

一覧表一

〈省略〉

一覧表二

〈省略〉

〈省略〉

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